細部小児科クリニック(東京都文京区)


母親が集える居場所をつくり楽しい子育ての実現に注力

掲載年月:2016年11月

 細部千晴 院長

「自分も2人の男子を育てた経験から、『こんな場所があればいいな』という視点で子育て支援に取り組んでいます」

細部小児科クリニック

東京都文京区根津2-14-11 Tツインズビル2階
TEL:03-6303-3162
URL:http://www.hosobe-kodomo.com/
診療内容:小児科、乳児健診

POINT!

小児科医として地域の母親の子育てを支援

出産前後の育児不安の解消などを行う「ペリネイタルビジット(育児等保健指導)」に取り組む。

専用スペースでさまざまな職種が育児の悩みに対応

育児に悩む母親たちが集う場所として、子育て支援広場「ポケットランド」を開設。保育士などを雇用し幅広い悩みに答える。

高齢者も参画した3世代が集う子育て支援を構想

高齢者のボランティアが地域の子育てを支える仕組みを構想。母親の育児負担の軽減と高齢者の社会参加と健康促進につなげる。

高齢者を対象とした講座の案内。孫育についてはこれからさらに力を入れていく予定だ

3階の「ポケットランド」にはおむつ替えのしやすい畳敷きのスペースも設置。またミルクをつくるためのキッチンも用意している

2階診療所にもキッズスペースを配置。周りには子育て支援活動に関する案内も掲示している

複数の専門職を雇用母親の幅広い相談に対応

東京都文京区の細部小児科クリニックは、一般診療や予防接種、乳児健診のほか、子育て支援にも注力する診療所だ。細部千晴院長は、以前同区で泌尿器科医である夫と開業していたが、小児科医が産後の育児相談に答える「ぺリネイタルビジット(育児等保健指導)」に取り組みたいと、2008年に移転開業した。

同院ではビルの2階で診療を、3階に子育て支援広場「ポケットランド」を2010年に開設し子育て支援活動も展開。室内は絵本やおもちゃが並び、乳幼児を連れた母親同士が笑いながら話す光景が見られる。スタッフは子育て経験のある女性が管理人として親子を見守るほか、保育士や精神保健福祉士、臨床心理士が随時、子育てに関する相談や、対応策の指導をしている。

「医師以外の専門家がいることで、患者さんの悩みに幅広く対応できます。昔は親族や近所の人からの援助が期待できましたが、核家族化や近隣とのコミュニケーション不足など、孤立した母親が増えています。母親が悩みを共有し助言ももらえる場所があることで、子育てを楽しむ余裕ができればと考えています」(細部院長)

これらの取り組みが診療所の価値を高め、ポケットランド利用者からの紹介で来院する患者もいるという。また、患者満足度が高いことから、今年4月の診療報酬改定で新設された「小児かかりつけ診療料」の算定に同意する人も多く、4月以降の月ごとの保険診療報酬は以前の1.3倍に増加。子育て支援活動は、同院の宣伝にもつながっている。

一方、専門職の雇用で人件費は上がるが、診療側の人手を最小限に抑えることで、調整が図れているという。院内は受付と医療事務、子どもを見守る「フロアガール」というスタッフの3人だけで、看護師はいない。医療事務が子どもの動きを押さえるなどの補助もするため、必要性は低いという。

「過去に看護師を雇用していた時期もあったのですが、子育てを理由に辞めてしまいました。そのためこの体制で運営を続けたら、スタッフが成長してくれて、赤ちゃんのホームケアの方法まで伝えられるようになりました。結果的に、人件費も抑えられたのです」

高齢者の参加を促し3世代が集うサロンを目指す

ポケットランドについて、細部院長は今、3世代が集える拠点にしたいと考えている。子育て、孫育てを経験した高齢者にボランティアになってもらい、母親の子育てを支えてもらいたいという構想だ。それは、地域包括医療をテーマに、高齢者の健康寿命を伸ばしたいという狙いもある。

「地域の子どもと触れ合うことは健康維持につながると思いますし、一人暮らしの人が地域とかかわるきっかけにもなるでしょう。母親も、子どもを預けて買い物などへ行けます。ほかの人の孫を育てる『孫育』を広げたいのです」

その前段階として昨年8月から毎月1回、高齢者を対象に映画鑑賞会を実施。また今年9月には東京余暇会と孫育をテーマにした講座も開催。参加者はまだ少ないが、これらをきっかけにポケットランドを知ってもらい、ボランティアへの関心を高めてもらいたいと細部院長は話す。

「少子化により、小児科の患者数は今後、減少の一途を辿るでしょう。時代に合わせてクリニックも変わらなければなりません。当院が目指すのは地域のさまざまな人が集うサロン。その機能を生かして、地域包括ケアシステムの一端を担いたいと考えています」(取材・文=庄部勇太)